シルクロードのものがたり(85)
天山天池からウルムチ市内にもどり、すぐにバザールに向かう。午後の4時だ。このバザールというのは、中東・中央アジア・インドなどに住む人々の「市場」を意味する言葉だそうだ。地元の人々の生活物資を売る市場で、もともとは物々交換の形で始まったらしい。そこに、現在では多くの観光客は立ち寄っている。敦煌のバザールに比べると、ウルムチのほうはイスラムの匂いがぷんぷん漂っている。
丸ごとハミウリを買う予定もないので、3人でブラブラと見物して歩く。この、目的もなくブラブラ見物するというのは、気楽でなんとも気持ちが良い。イスラム帽子をかぶったお嬢さんの店でクッキーみたいなお菓子を少々買う。ヨット部のS君はザクロのジュースを買う。酸味がなく甘くてとても美味しい。石段に腰を掛け、これらを飲み食いしながら、3人で行き交う人々の顔をながめる。トルファンに比べると、青い目・金髪の人が多い気がする。
帰りの待ち合わせ場所と時間は、すでに決めてある。ガイドのエイさんのお姉さんが経営する「和田玉・ホータンギョク」の店だ。バザールの入り口近くにあり立派な店構えだ。お姉さんがお茶を出してくれる。何か買ってあげたいと思うのだが、適当な商品がない。ちょっとした小さな玉製品が5万円とか10万円もする。安い商品もある。くず石のネックレスが一つ千円程度で売っているが、これを買っても日本でもらってくれる人はいない。娘や家内から馬鹿にされるのが目に見えている。
「田頭さん、これはいいものだよ。安くしておくよ。代金は日本に帰って送ってくれたらいいから、持って帰ったら」とエイさんが言う。5-6キロ程度の本物のホータン玉の原石で、旅行バッグに入りそうだ。少しその気になって、値段を聞くと、「1500万円」だと言う。一瞬で怖じけつ”いてしまった。
「これは本物のホータン玉で、10年ほど前はこのクラスの玉には5000万円の値を付けて、上海や北京からの富裕層が気前よく買っていった」と言う。本当らしい。私が見た限りでは、お姉さんの店の構えは大変立派なのだが、買う人はほとんどいない。でもあまり気にしていない感じがする。景気にはサイクルがあり、次の好景気が来るまで、5年でも10年でも店の経営は大丈夫のようだ。お姉さんは今でも定期的にホータン(和田)に玉の買い付けに行っているという。
このホータン玉(和田玉)を売る店は、敦煌でもトルファンでも何十軒も見た。玉門関は二千年以上前に、このホータン玉(崑崙の玉)の密輸入を防ぐために造られた関所である。私はこの「ホータン玉」というものに以前から興味を持ち、このブログでも「崑崙(こんろん)の玉」と題して掲載した。今回の旅行での見聞から、私が考えていた以上に、この「崑崙の玉」は、今なお中国人の意識と生活の中に深く根をおろしているように思った。
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| ウルムチのバザール イスラムの匂いがする |
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| ウルムチのバザール |
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| イスラム帽子のお嬢さん |
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| 石榴屋さんでS君がザクロジュースを買う |
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| エイさんのお姉さんのホータン玉の店 |





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