ー12月8日ー
〇人間の常識を超え 学識を超えておこれり 日本世界と戦う
南原繁 明治22-昭和49 (東大教授)
〇開戦の電報持ちし指揮官の 手がこころもちふるへてゐたり
柳川貞光 大正6- (海軍にて)
〇今はしも東京の沖を航過(すぎ)むとす 心をただして左舷に向ふ
佐藤完一 -昭和17 (空母搭乗員)
〇特殊潜航艇といふあたらしき艦(ふね)の名が 耳朶(じだ)に余韻を残す
志津文雄 (アララギ)
〇いざゆかむ 網も機雷も乗り越えて 撃ちて真珠の玉と砕けむ
古野繁実 大正7-昭和16年12月8日 (海兵67期)
ー銃後の国民生活ー
〇旅を行く吾に賜(た)びたる白き飯 憚(はばか)りつつも汽車中に食(を)す
大野広高 明治35-
〇晴衣二枚と替えたるいもは宝なり 麦とかゆにしていく日つながむ
高木せつ 大正3-
〇干し上げて一升ほどの豌豆を たからの如く妻の貯(たくわ)ふ
松下仙次
〇煎りをえし わつ¨かの豆を子供多き 隣の家に妻分けに行く
桜井平喜
〇病人に配給ありしいささかの 蜂蜜なれば惜しみつつ食ふ
霜井清子
〇たまさかに配給の肉は子らに分け 妻と煮こみの野菜のみ食ふ
佐沢波弦 明治22-
〇一本に残りし大根我が番まで 売れずにあれと願ひつつ待つ
吉田佳子 大正11-
〇召されたる夫(つま)の使ひし鶴嘴(つるはし)に馴れて石炭掘(すみほ)る女抗夫われは
下田綾女
〇釣鐘は国に捧げて楼門(ろうもん)の 百日紅(ひゃくじつこう)はくれなゐ燃ゆる
平井庫夫
〇みいくさに明日は捧げむ梵鐘(ぼんしょう)を 僧はひそかにうちならしをり
高木美佐子
〇寺々ゆ 召されてをゆく梵鐘の ここの駅にも四つ並べり
原君代 大正1-
〇しろがねも黄金(くがね)も家にのこさめや 子らはもとより国にささげつ
土岐善麿 明治18-
〇特攻隊に続くとあへて深夜業 希(ねが)ひ来にけり生徒(こ)ら十二名
永石三男 明治37-昭和33
〇挺身隊(ていしんたい)の女学生三人片隅に 活字ケースを暗記してをり
青木辰雄 明治42-
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