富山県選出の代議士で綿貫民輔という人がいる。すでに政治家は隠退されたが、今なお元気で神社庁の「長老」をされていると聞く。92歳になられる。
10年ほど前、この人が新聞か週刊誌に書かれた話が面白かった。記憶を頼りにご紹介したい。
綿貫さんは、富山県井波の古い神社の跡取り息子に生まれた。祖父が宮司だったが、4期目の町長を務め会社の経営者でもあったので、毎日が宴会でほとんど家にいない。
養子に入った父が神職を継ぐ予定だったが、当時県会議員をしていて、これまた祖父同様ほとんど家を留守にしている。お二人とも神官の仕事が嫌だったのかも知れない。
2人に愛想を尽かした祖母は、後継ぎとして孫に目を付ける。厳しい祖母は、小学校にあがる前からこの人に神主の儀礼を教え込む。まだ読み書きもできない孫に祝詞(のりと)を暗唱させてしまった。
6歳で宮司初デビューの時は、わけもわからないまま袴をはかされ、船に乗せられた。
宮司の代理として、河の上流にある30軒ほどの集落に祝詞をあげに行った。
村人総出で出迎えてくれた。
「若様が来てくれた!」と集落を挙げての大歓迎であった。なんとか無事に神事を終えたら、宴席が用意されていて酒が出た。
「私は子供ですから」と一度は酒は断ったのだが、
「宮司代理だから御神酒(おみき)を少しだけ飲んでください」と集落の長老が言う。
子供心にも、「これも仕事だ」と思い、思い切って、おちょこ1杯飲んだら旨かった。もう一杯、と勧められてまた飲んだ。そして酔っぱらってしまった。というのが本人の述懐である。家に帰って、親に叱られたか褒められたかは書いてなかった。
この人は衆議院議員に13回当選して、いくつかの大臣をやり、衆議院議長まで務めている。
第1回から最後の13回まで、この時祝詞をあげてお酒を飲まされたこの30軒の集落の票は、1票たりともほかの候補者に渡らず、すべて私に入れてくださった。ありがたいことだ。と書かれてあった。
92歳の今なお、元気で仕事をされ、お酒も飲んでおられるらしい。
きっとおなかの中に、立派な「酒虫」が1匹いるのだと思う。
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