2020年12月21日月曜日

フランクリン・ルーズベルト

昭和天皇と鈴木貫太郎(5)

 鈴木内閣の組閣から1週間もたたないうち、米国東部時間1945年4月12日午後3時30分、米大統領フランクリン・ルーズベルトが脳溢血で急死した。

敗戦直前のドイツのヒトラー総統は、「運命が史上最大の戦争犯罪人、フランクリン・ルーズベルトを地上から取り除いた。この時点において、戦争は決定的な転機を迎えるだろう」と悪態をつき、喜びの声明を発表した。

就任して日も浅い鈴木貫太郎は、同盟通信の記者の質問に答えて一場の談話をなし、「アメリカ国民に対す深い哀悼の意を表明する」と語った。これは電波に乗ってすぐに海外に伝えられた。

ニューヨーク・タイムズは、次のように伝えている。

「男爵・鈴木貫太郎提督は、フランクリン・D・ルーズベルト大統領の死去に際し、アメリカ国民に対する” 深い哀悼の意 ”を表明した。北米向けの英語による無線電信の伝えるところによると、新任の日本の総理大臣は同盟通信の記者に対して、次のように語った。ルーズベルトの指導力は実に効果的なものであって、これが今日におけるアメリカの優勢な地位をもたらしたものであることを私は認めないわけにはゆかない。であるから、彼の死去がアメリカ国民に対して大きな損失であることはよく同感できるのであって、私の深い哀悼の意をアメリカ国民に向けて送るものである」

NYタイムズは同時に、次のような鈴木の続きのメッセージも伝えている。

「自分はルーズベルト氏の死去によって、アメリカの日本に対する戦争努力に変化が生じるとは考えていない。日本側としても同様、英米の武力政策と世界支配に対抗する全民族の共存共栄のための戦争を継続すべく、日本の決意にはいささかの動揺もない」


ナチス政権に失望してアメリカに亡命していた69歳の作家・トーマス・マンは、母国ドイツ国民宛の肉声のメッセージ「ドイツの聴取者諸君!」の放送でこれに触れている。

「ルーズベルトを失った悲しみが世界を包んでいます。老戦士チャーチルが流れる涙を隠そうとしないことも、スターリンがうやうやしく追悼をささげていることも、驚くにたりません。しかしドイツ人諸君、日本帝国の総理大臣が故人を偉大な指導者と呼び、アメリカ国民に哀悼の意を表明したことに対し、諸君は何と言いますか?日本はアメリカと生死をかけた戦争をしています。それでも、あの東方の国には、騎士道精神と人間の品位に対する感覚がまだ存在するのです。これがナチスに支配されているドイツと違うところです」





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