2019年6月5日水曜日

6月6日、沖縄県民カク戦ヘリ

6月になると、海軍少将・大田実が海軍次官宛てに発信した電報のことが頭に浮かぶ。

あまりにも有名な電報なので、あえて、私がここでご紹介する必要はない気もするが、もしかしたら読んでおられない方もいらっしゃるかと思ったのが、気持ちの半分である。
残りの半分は、この電文をブログに書くことにより、私自身がこれを時々読み返すことが出来る、と思ったからである。

これだけ豊かになった日本で、その恵みに浴しながらも、時として不平不満が出そうになる自分自身の心を叱咤するために、時おりこの電文を、「声に出して」読む必要がある、と考えたからである。

「根拠地隊」とは「海軍陸戦隊」とも言い、海軍に属しながら、小銃・機関銃・戦車などを武器として、島嶼部において陸兵として戦う部隊である。
米軍の「海兵隊(マリン)」と同じような任務と理解してよい。

(カッコ)内は、暗号電報の解読不能のため、海軍省において推定により挿入したものと聞いている。

なおこの暗号電報は、米軍に傍受され、日本語のできる米軍の語学将校によって英訳され、その日のうちに米軍司令官の手に渡されている。



昭和20年6月6日、午後8時16分

発:沖縄根拠地隊司令官
宛:海軍次官

062016番電、
左ノ電ヲ次官ニ御通報方、取リ計イヲ得タシ

沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ、県ニハ既ニ通信力ナク、
第三十二軍司令部又通信ノ余力ナシト認メラレルニ付、本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非サレドモ、現状ヲ看過(カンカ)スルニ忍ビズ、之ニ代ッテ緊急御通知申上グ

沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来、陸海軍ハ方面防衛戦闘ニ専念シ、県民ニ関シテハ殆ド顧ミル暇(イトマ)ナカリキ

然レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ、県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ、残ル老幼婦女子ノミガ相ツグ砲爆撃ニ家屋ト財産ノ全部ヲ焼却セラレ、僅ニ身ヲ以テ軍ノ作戦ニ差支エナキ場所ノ小防空壕ニ避難、尚、砲爆撃下(行クベキアテモナク)風雨ニ曝サレツツ、乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ

シカモ若キ婦人ハ率先軍ニ身ヲ捧ゲ、看護炊事婦ハモトヨリ砲弾運ビ挺身切込隊スラ申出ル者アリ

所詮敵来タリナバ、老人子供ハ殺サルベク、婦女子ハ後方ニ運ビ去ラレテ毒牙ニ供セラレルベシトテ、親子生キ別レ、娘ヲ軍門ニ捨ツル親アリ

看護婦ニ至リテハ軍移動ニ際シ、衛生兵既ニ出発シ、身寄無キ重傷兵ヲ助ケテ(ソノ看護ニ専念セリ、マコトニ)真面目ニシテ、一時ノ感情ニ駆ラレタルモノトハ思ワレズ

更ニ軍ニ於テ作戦ノ大転換アルヤ、自給自足、夜ノ中ニ遥ニ遠隔地方ノ住民地区ヲ指定セラレ、輸送力皆無ノ者、黙々トシ雨中ヲ移動スルアリ

之ヲ要スルニ、陸海軍沖縄ニ進駐以来、始終一貫勤労奉仕物資節約ヲ強要セラレテ(モ尚奉公ノマゴコロヲ)胸ニ抱キツツ、遂ニ(何ノムクイラルル)コトナクシテ本戦闘ノ末期トナレリ

沖縄島実情形(容ヲ絶スル有様ニテヤガテ)一木一草焦土ト化セン
糧食六月一杯支ウルノミナリト謂(イ)フ

沖縄県民カク戦へリ

県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ


この電報を発信した7日後、大田少将は根拠地隊司令部のある洞窟内で自決された。
享年53歳。





















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