2020年6月4日木曜日

昭和万葉集(5)

ー戦争終結ー

〇聖断は くだりたまひてかしこくも 畏(かしこ)くもあるか涙しながる
  斎藤茂吉  明治15-昭和28

〇父母の 泣けば幼き子等までが ラジオの前に声あげて泣く
  高見楢吉 明治33-昭和40

〇立ちかへる み国の春を疑はず 七夜を泣きて心定まる
  四賀光子 明治18-昭和51

〇大君の のらす御詞(みこと)に胸せまり 声立てて誰も誰も泣きやまず
  下村海南 明治8-昭和32 (最後の御前会議)

〇身はいかに なるともいくさとどめけり ただたふれゆく民をおもひて
  御製 (天皇 御名 裕仁) 明治34-

〇大君の 深き恵みにあみし身は 言ひ遺すべき片言もなし
  阿南惟幾  明治20-昭和20

ー皇軍解体ー

〇かくも広く 戦ひ得しは世界史になしと 黄女史なぐさむる気か
  橋本徳壽  明治27-  (台湾)

〇南無帰依仏 救ひ給へと子を抱きて ソ連兵の持つ燈(あかり)の中に
  佐竹安子 明治44- (満洲)

〇命かけ 守るべき受話器ふき浄め 今は渡さむ国敗れたり
  鈴木政子  昭和2- (朝鮮)

ー無言の帰還ー

〇帰り来ぬ 人と思へど復員の 似たる姿に心ときめく
  小須田房子 大正15- (恋人を偲ぶ)

〇戦ひに はてしわが子と対(むか)ひ居し 夢さめて後(のち)身じろぎもせず
  釈迢空  明治20-昭和28  (子を憶う)

〇兄死せる 知らせは聞けど帰る日を 待ちゐる母に伝え難(がた)しも
  光橋英子  (兄の死)

ー還りを待つー

〇復員の 噂(うわさ)聞きたり真夜中の 小さき音にも胸とどろかす
  津金美佐子 大正10- (夫を待つ)

〇船ひとつ おくれて還ると言ひしとぞ 子の伝言を人の来て告ぐ
  稲垣浩 明治30-昭和53 (父・母の思い)

〇俘虜(ふりょ)葉書 僅か三十字(みそじ)のカナ文字に 愛(かな)しや夫の癖の見えたる
  中村敏子 大正1- (俘虜郵便)

〇俘虜の身の 兄が文(ふみ)あはれ サムサニモマケズゲンキとかな文字の文
  太田幸三  大正13- (俘虜郵便)

〇五人(いつたり)の 兵を出せる農家あり 五人の兵いまだ帰らず
  横尾健三郎 明治40-昭和51  (未復員兵)






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