ー戦争終結ー
〇聖断は くだりたまひてかしこくも 畏(かしこ)くもあるか涙しながる
斎藤茂吉 明治15-昭和28
〇父母の 泣けば幼き子等までが ラジオの前に声あげて泣く
高見楢吉 明治33-昭和40
〇立ちかへる み国の春を疑はず 七夜を泣きて心定まる
四賀光子 明治18-昭和51
〇大君の のらす御詞(みこと)に胸せまり 声立てて誰も誰も泣きやまず
下村海南 明治8-昭和32 (最後の御前会議)
〇身はいかに なるともいくさとどめけり ただたふれゆく民をおもひて
御製 (天皇 御名 裕仁) 明治34-
〇大君の 深き恵みにあみし身は 言ひ遺すべき片言もなし
阿南惟幾 明治20-昭和20
ー皇軍解体ー
〇かくも広く 戦ひ得しは世界史になしと 黄女史なぐさむる気か
橋本徳壽 明治27- (台湾)
〇南無帰依仏 救ひ給へと子を抱きて ソ連兵の持つ燈(あかり)の中に
佐竹安子 明治44- (満洲)
〇命かけ 守るべき受話器ふき浄め 今は渡さむ国敗れたり
鈴木政子 昭和2- (朝鮮)
ー無言の帰還ー
〇帰り来ぬ 人と思へど復員の 似たる姿に心ときめく
小須田房子 大正15- (恋人を偲ぶ)
〇戦ひに はてしわが子と対(むか)ひ居し 夢さめて後(のち)身じろぎもせず
釈迢空 明治20-昭和28 (子を憶う)
〇兄死せる 知らせは聞けど帰る日を 待ちゐる母に伝え難(がた)しも
光橋英子 (兄の死)
ー還りを待つー
〇復員の 噂(うわさ)聞きたり真夜中の 小さき音にも胸とどろかす
津金美佐子 大正10- (夫を待つ)
〇船ひとつ おくれて還ると言ひしとぞ 子の伝言を人の来て告ぐ
稲垣浩 明治30-昭和53 (父・母の思い)
〇俘虜(ふりょ)葉書 僅か三十字(みそじ)のカナ文字に 愛(かな)しや夫の癖の見えたる
中村敏子 大正1- (俘虜郵便)
〇俘虜の身の 兄が文(ふみ)あはれ サムサニモマケズゲンキとかな文字の文
太田幸三 大正13- (俘虜郵便)
〇五人(いつたり)の 兵を出せる農家あり 五人の兵いまだ帰らず
横尾健三郎 明治40-昭和51 (未復員兵)
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