2020年6月15日月曜日

昭和万葉集(8)

ー飢餓との戦いー

〇豆かみて 書(ふみ)読みしとふいにしへ人 憶(おも)ひつつ我は芋粥(いもがゆ)を啜(すす)る
  牧野英一  明治11-昭和45  (雑炊と粥)

〇釜の底 払ひて詰めしわが昼餉(ひるげ) 妻はひとりをなに食ふならむ
  高柳金芳  明治43-  (一粒の米)

〇畑打てる 日当として得し米を 妻に見せむとひたに急げり
  土屋大吉  明治44-  (白米の飯)

〇たまさかに 白米の飯たきたれば 何の祝(いわひ)と子は問ひにけり
  藤原優  明治18-昭和50

〇たまさかに 白米食(は)めば眩(まぶ)しくて 罪にも似たるおそれありけり
  武田貞次

〇一片の レモン浮かべるレモン湯の かをりよ妻が今宵のおごり
  篠崎正夫 大正2-

〇サッカリン 千分の六を含む饅頭に お辞儀をしつつ子は頬(ほほ)ばるも
  釜田喜三郎  明治44-

ー進駐軍ー

〇黒人の 兵士と行きし一少女の 美しきことにひと日こだはる
  冷水茂太  明治44-  (進駐軍)

〇アララギを The Yew と訳し アメリカ軍司令部に届けをしぬ
  五味保義  明治34-  

ー折々の歌ー

〇あなたは 勝つものとおもつてゐましたかと 老いたる妻のさびしげにいふ
  土岐善麿  明治18-

〇たたかひに やぶれし国の秋なれや 野にも山にもなくむしのこゑ
  谷崎潤一郎  明治19-昭和40

〇戦ひに 敗れし国もあつ¨さゆみ 春としなれば千草(ちぐさ)萌(も)え出ず
  尾崎一雄  明治32-


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