ー飢餓との戦いー
〇豆かみて 書(ふみ)読みしとふいにしへ人 憶(おも)ひつつ我は芋粥(いもがゆ)を啜(すす)る
牧野英一 明治11-昭和45 (雑炊と粥)
〇釜の底 払ひて詰めしわが昼餉(ひるげ) 妻はひとりをなに食ふならむ
高柳金芳 明治43- (一粒の米)
〇畑打てる 日当として得し米を 妻に見せむとひたに急げり
土屋大吉 明治44- (白米の飯)
〇たまさかに 白米の飯たきたれば 何の祝(いわひ)と子は問ひにけり
藤原優 明治18-昭和50
〇たまさかに 白米食(は)めば眩(まぶ)しくて 罪にも似たるおそれありけり
武田貞次
〇一片の レモン浮かべるレモン湯の かをりよ妻が今宵のおごり
篠崎正夫 大正2-
〇サッカリン 千分の六を含む饅頭に お辞儀をしつつ子は頬(ほほ)ばるも
釜田喜三郎 明治44-
ー進駐軍ー
〇黒人の 兵士と行きし一少女の 美しきことにひと日こだはる
冷水茂太 明治44- (進駐軍)
〇アララギを The Yew と訳し アメリカ軍司令部に届けをしぬ
五味保義 明治34-
ー折々の歌ー
〇あなたは 勝つものとおもつてゐましたかと 老いたる妻のさびしげにいふ
土岐善麿 明治18-
〇たたかひに やぶれし国の秋なれや 野にも山にもなくむしのこゑ
谷崎潤一郎 明治19-昭和40
〇戦ひに 敗れし国もあつ¨さゆみ 春としなれば千草(ちぐさ)萌(も)え出ず
尾崎一雄 明治32-
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