2020年6月1日月曜日

昭和万葉集(4)

ーアメリカ強制収容所ー

〇いくたびか 香をなつかしむ遠く来し 慰問の醤油の瓶とり出でて
  富田ゆかり (強制キャンプ)

〇聞くさへや わが胸いたむ米機五百 故郷襲ふとけふのニュースは
  内田静 (強制キャンプ)

ー連合軍の反攻ー

〇一線は 全滅せりと喚(おら)びつつ 熱に狂ひし若き隊長
 田中富雄 大正3- (ビルマの戦場)

〇腹一杯 安倍川を食ひたいと言いし戦友(とも)を 遮放(しゃほう)の山に埋めて来にけり
  渡辺勇  大正5-

〇アッツ島の 兵みな死すとしばらくは 草鞋(わらじ)も解かず身じろぎもせず
  片桐勘蔵  明治37-昭和47

〇吾が頭を 撃つべき拳銃を磨きゐる ジャングルは又雨期に入るなり
  小国孝徳 大正6- (南方にて)

〇餓死したる 友の袋に一合の 米包まれてありたるあはれ
  森 誓夫 明治44- (南方にて)

〇くもりなき をみなのいのち黒髪を 梳(くしけつ¨)るなり死すべきまへに
  加藤木久子  明治43- (サイパン島)

〇大君の 御楯(みたて)となりて吾はいま 翼休めん靖国の森
  田熊克省 大正8-昭和20 (神風特別攻撃隊 法政大学)

〇國民(くにたみ)の 安きを祈り吾は征く 敵艦隊の真っただ中に
 森 茂士 大正14-昭和20  (神雷部隊第七建武隊・桜花隊)

〇国の為 重きつとめを果たし得で 矢弾尽(やだまつ)き果て散るぞ悲しき
  栗林忠道  明治24-昭和20 (硫黄島)

〇硫黄噴(ふ)く 島の岬にたちぬれて 皇国(みくに)の栄(さかえ)けふも祈りぬ
  作者未詳  (硫黄島)

〇秋をまたで 枯れゆく島の青草は 皇国の春に蘇(よみが)へらなむ
  牛島満  明治20-昭和20  (沖縄)

ー愛と死ー

〇かにかくに あきらめかねつ愛(めぐ)し子の 在りし日の想出(おもひで)になみだ流るる
  石坂泰三  明治19-昭和50

〇配給の わずかな食糧(かて)を背負ひ来る 母は季節の花も忘れず
  太田幸子 








 

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