ー兵還るー
〇すり減りし 軍靴踏みしめ踏みしめて 復員船のタラップ登る
大和田徹 大正9-(復員船上)
〇霞みつつ 紀伊の国見ゆ日本見ゆ いのちはつひに帰り来にけり
宮地伸一 大正9- (復員船上)
〇還り来て 何をか言はむ夢にさへ 見し味噌汁のこの香りはや
小国孝徳 大正6- (還ってきた兵)
〇満洲より 還りし吾の頭なで まこと徳一かと母泣き給ふ
福川徳一 大正3- (復員)
〇戦ひに 敗れて帰り来たりしに 妻は赤飯を炊きて迎ふる
平松久雄 明治37-
〇はじめて逢ふ 七つの吾子(あこ)が面(おも)はゆさ そぶりにみせてわれにつきまとふ
山内清平 大正3-
〇北支那に ありて書きたるわが遺書が 今日届きたり吾におくれて
田口喜一 大正14-
〇万歳の 声に送られ出でしかど 潜戸(くぐりど)押してはひとり帰りく
武安千春 明治35-
〇還り来し 夫(つま)のかたへに飯(いひ)を盛る かかる日恋ひて十年経(ととせへ)にけり
中本幸子 大正3-
〇黄昏(たそがれ)の 庭にまさしく子は立てり 現身(うつしみ)生きてあな還りきつ
西川定子 明治37-昭和43 (わが子を迎える)
〇わが子帰る 生けるわが子に見入りつつ ただに喜ぶわれとわが妻
佐藤堅司 明治25-昭和39
〇戦友(とも)あまたを 人間魚雷に死なしめて 帰る吾児(あこ)は多く語らず
菅原俊治
〇シベリアの 奥地に夢見し吾が妻を 還りてみれば弟の妻
鱒元登美数
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